ロ包 ロ孝
 そして俺は力の限り叫んだ。

「達っつあん! 逃げろ! 計画は中止だ! 情報が全部漏れていた!」

「坂本さん? は、はい解りました。遠藤! 岡崎! みんなに伝えて来い、フゥゥゥウ、クソッ!」

 俺は声のする方へと走り、敵に捕らえられている渡辺を発見した。彼は【者】を使って兵士を振り払おうとしたが、相手の数が大過ぎて身動きが取れないでいる。

「達っつぁん【空陳】だ! 丸ごと吹き飛ばせ! フゥゥゥウ」

 俺の放った【玄武】で9倍力になった渡辺は敵を振りほどく。

「はい! ぬおおおっ、ダァァッ!」

「ォワアァァッ」「ギャァァァッ」

  ドカンッ!

 3倍力となった渡辺の【空陳】は、兵士の塊と一緒に廊下の壁まで吹き飛ばした。

「山本さん達は!」

「解りません。舞台装飾の佐藤さん達はどうしますかっ」

「連れて来い。今開いたあの穴から脱出するんだ、急げ!」

 俺は大阪支部の4人を探しに2階へ駆け上がる。ふと窓から階下を見ると裏庭に列をなしているのは、今正に連行されようとしている彼女達だった。

「ダッ」 ガシャン!

 はめ殺しになっていて開かない窓を割り、俺は叫んだ。

「山本さんっ! 【北斗】だっ、上空へ逃げるんだっ!」

 突然の呼び掛けにも慌てる事なく、彼女達は次々と浮き上がった。周りを取り囲んでいた敵兵達は空を仰いで右往左往している。

「そのままで居て下さいっ! シュッ! シュシュッ!」

  ザザァッ ドンッ

「ぅわっ」「おわぁっ」「わぁぁぁっ」

 横長の【南斗】を兵士達の足元へ放ち、隊列を軒並み転倒させる。何が起こったのかも解らずのたうち回っている兵士をよそに、俺は山本達へ指示を飛ばした。

「渡辺達は森の方へ行く筈です。あちらに廻って下さい!」

 着地して【者】で走り去る山本達を見送っていると突然、俺の頭に声が湧き上がってきた。


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