ロ包 ロ孝
 さすが伊賀流忍術を極めただけの事は有る。里美の事にも動じず、関はキビキビと指示を飛ばしている。

「もう夜も明けた。荒野で黒は却って目立ってしまうな」

 彼らは次々と黒装束を脱ぎ捨てた。

「しかし居たのは雑魚ばかりでしたね。
 一体総書記はどこに居るんでしょう」

「護衛の数も激減していましたし、既に逃走してしまったのではないですか?」

「私は刀が折れてしまいました。やっぱりこいつじゃ役不足だったみたいです」

 刀身をチェックしていた関はそれを打ち捨てて答えた。

「そうだな。私の刀もひび割れていた。やはりセラミックじゃ弱過ぎる。なぁに、素手の方が身軽に動けるさ」

  パララララッ ドンッ

「ああっ!」

  ドサッ

 いきなり転んだ秋山が起き上がりながら言った。

「ははっ。俺、こけちゃいました。酷いなぁ、今誰か押しましたか?」

「押すって誰が、お前の後ろには誰も……あ、秋山。お前、血……」

「はい?」

 自分の腹を見下ろしていた秋山は、漸く自分の身に降り掛かった現実に気が付いた。

「え? あ、うわっ! うゎぁあああああああっ!」

 彼の服がみるみる真っ赤に染まっていく。腹を押さえてヨロヨロと歩いていた秋山は関に縋り付いた。

「関さぁん……腹が熱いよぉ。
 背中が痛いよぉ、関さ……ゴフッ、ゲフ、げぼっ!」

 咳と共に血を吐いた秋山はへなへなと崩れ落ち、地面に寝転がった。弾丸は背中から腹を貫通しているようで、良く見ると内臓が弾け飛んでいる。

「秋山! しっかりしろ!」

「関さぁぁ……ゴボォッ」

 また大量に喀血した秋山は、口から真っ赤な血を吐き出しながら、弱々しくおどけて見せた。

「わぁあああ。ヒック、こんなの吐いちゃいましたぁヒック」

 関は秋山の頭を撫でながら、身体を痙攣させる彼を見守っていた。


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