ロ包 ロ孝
『そうですか、でも敵にはくれぐれも気を付けて下さい。ああ、関さん達はまだそちらに?』

 敵兵が撤退した後、俺が各部屋を確認した時には誰も居なかった筈だ。

「いや、こっちは人っ子ひとり居ない。……まさか……捕まったのか?」

 俺は全身の血が引いていくのを感じた。

『そうか! やっぱり行ったんだ……』

 しかし渡辺は何かを思い出したのか、手を打って言う。

「達っつぁん、どういう事だ?」

 渡辺に依ると関達はもう一度総書記暗殺の為に突入するつもりだったらしい。俺には言わないようにと口止めをされていたそうだ。

単独行動が多い彼らにはしっかり釘を刺しておくべきだったが、こうなって考えてみれば彼らが別の展開を見せている事で、今後の戦略に広がりが出来る。

何はともあれ、里美が寝返った事を知らせなければ!

「俺は関さん達と合流する。達っつぁん達は森で山本さん達と落ち合って海岸線に向かえ! 幸運を祈る」

 渡辺との【闘】を終了し、関の携帯にメールを送った。衛星からの電波が届く所に居れば連絡が付く筈だ。

「建物の中に居なければいいが……」


∴◇∴◇∴◇∴


 その時。おびただしく飛び散った血の海のただ中で、関達は呼吸を整えていた。

「はぁっ、はぁっ。坂本さんからメールだ。何だとっ? 坂本女史が二重スパイ? まさか! ……あっちは大変な事になっているらしいぞ?
 まぁ、こっちもある意味大変な状況ではあるけどな」

 宮殿に総攻撃を掛けた関達は、昨夜よりも手薄になった敵兵たちの戦列を突破し、尽く刀の露としたのだ。関は言う。

「死体累々とはこの事だ」

「坂本女史、里美さんですか? 二重スパイって事は……里美さんはここの国の人間だったんですか!」

「そんな! 彼女は俺達を裏切ったんですか!」

 秋山も太田も動揺の色を隠せない。

「どうやらそのようだが、真偽の程は解らない。ともあれ今は総書記暗殺が先決だ。各自装備を確認しろ」


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