ロ包 ロ孝
 俺が顔を撫でながら励ますと、里美は力無く微笑んだ。

「化粧が取れちゃうでしょ? 顔をいじくらないでっ」

「ああ、すまん」

 俺は慌てて手を引っ込める。

「ふふっ……きっとバチが当たったのよ。
 あたしみたいな人間が、淳との幸せを望んでしまったバチが……ああ淳……寒い……」

「里美ぃ!」

 もう一度彼女をかかえ直し、身体を密着させて体温を伝えようとしたが、里美の震えは止まらない。

「でもあたし……淳に出逢えて、そして恋が出来て良かった……。
 こうしてひとりの女として死ぬ事が出来るんだから」

「何言ってるんだ里美! お前が死んだら俺はどうやって生きればいいんだ! お前が居ない世界で生きてたって意味が無いじゃないか!」

 彼女は俺が握っていた手をギュッと握り返して言った。

「淳。貴方はこの子のお父さんになるんだから、もっとしっかりしなきゃ駄目じゃないの」

「うんうん、そうだな。しっかりするよ」

 俺は流れる涙もそのままに、里美を見つめていた。

「ねぇ? 淳。あたしが死んだら、この子も死んじゃうんじゃないの?」

 そんな質問に答えられる訳がない。俺は彼女の瞳を見つめて、ただ微笑んでいるしかなかった。

「嫌っ……そんなの嫌よ……あたし死にたくないよぉ。淳と一緒に生きたいよぉ」


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