ロ包 ロ孝
「いや、爺ちゃんがな? お前が色仕掛けで情報を得て来てるって言うんだ」

『あらやだ、バレちゃってたのね』

「!!」

 里美は悪びれた様子も無くアッサリと言ってのける。俺は携帯を持つ手が痛くなる程握り締めていた。

「情報を得る為に工務店のオヤジに抱かれたっていうのか!」

 いつしか俺の声は震えていた。俺の為とはいえ、里美の不貞が許せなかったのだ。

『淳……』

「……」

『フフッ、馬鹿ねぇ。あたしが淳以外の男に抱かれるとでも思ったの?』

 里美はさも面白くて仕方ないという様子で笑いを堪えている。

『たしかにあたしの身体は武器よ? でもチラっと胸の谷間を見せるだけ。あたし、父の仕事の関係で、子供の頃からヌードモデルをしていたの』

 里美が言うには彼女の父親は結構高名な画家で、美術教室もやっていたのだとか。そこで生徒の為にモデルをやる代わりに、高額な小遣いを親からせしめていたのだという。

『だからあたしは男のイヤラシイ視線なんか、慣れっこなのよ、アハハハ』

 なんだ。そういう事だったのか。要らぬ心配だったんだ。しかし里美はここぞとばかりに攻撃を仕掛けて来る。

『そんな心配するなんて、淳もあたしの事好きねっ! 焼きもち? 嬉しいなっ』

「ば、馬鹿。からかうな!」

『心配掛けてごめんなさいね。でもあたしの目には貴方しか写ってないの。だから安心してね! 淳大好き、チュッ!』

「周りに誰も居ないのか?」

 俺は部屋に1人だが、里美の声の後ろには雑踏の賑やかさが有った。


< 49 / 403 >

この作品をシェア

pagetop