ロ包 ロ孝
 部の連中には笑われてしまったが、俺に取って不本意な『クールマン』という仮面の薄皮が、また一枚剥がれていった朝だった。


∴◇∴◇∴◇∴


「主任。そろそろオープンにしちゃった方がいいんじゃないすか?」

 昼食時、栗原が俺の隣に腰掛けながら言う。

「いや、昼に洋食はどうも苦手でね」

「やだなぁ主任。オープンサンドの事じゃないっスよ」

 栗原は言わば中堅の社員だ。今年で5期目の後輩を育てあげて来た。最近になってやたら俺に懐いてくるようになったが、仕事も出来て親しみ易い可愛い部下だ。

「里美さんとの事っスよ!」

「んなっ……」

「みんな知ってますよ? 知らないと思ってるのは主任だけかも」

「山崎は! アイツはなんて言ってるんだ?」

「ああ、主任はバラしたく無いみたいだから知らない振りをしてあげてって言ってました」

 それじゃ肯定してるも同じじゃないか! アイツめ!

「まぁ、つまりはそういう事なんだが……余り社内でそんな……なぁ」

 俺はもっともらしい事も言えず、かなり歯切れが悪い。

「今はそんな時代じゃないスよ。なんなら俺がみんなに教えて来ましょうか? 
 ……って言うか、みんな知ってるんスけどネ。主任が交際を認めたって言い回ってきますね!」

 と言って食堂を飛び出そうとする栗原を引き止める。

「そんな余計な事しなくていい!」

「でもこれ、部長命令なんスよ……」


< 65 / 403 >

この作品をシェア

pagetop