ロ包 ロ孝
「お爺さま……凄いわ!」

 そして思い出したように里美も口を開いた。

「こんな凄い術が私にも出来るのかしら……」

「勿論出来るとも。
 声を放つ時に少々気を付けなければならないんじゃがの。
 まずそれより先に、力の上げ方と気を蓄める方法についての修練が先じゃ」

 それに各術の細かい直しもあるだろうと、音力で習得した術を見て貰う事になった。


───────


 やはり巻物の記述だけでは解らない事も多い。それに加え各術の延長線上に有る裏技が存在する事も解った。これだけの術が揃えば音力の誰にも負ける事は無いだろう。

「淳はこれでほぼ完璧じゃ。え〜っと……」

「里美ですっ」

 待ち構えていたかのように間髪入れず答える。

「歳を取るとどうもいかんな。里美さんは【陣】(ジン)の切れ味が悪い。
 【陣】は【前】(ゼン)の基本となる術だから、もっと声を前に出してじゃな……」

 祖父から手直しをして貰うと、俺達の術はまるで見違えたように洗練された。【闘】(トウ)はより遠くへ、【兵】(ピョウ)や【者】(シャ)はより少ない息で長く保つようになり、他の術も一様に改善された。


∴◇∴◇∴◇∴


 垣貫が死んだという知らせを受けたのはそんな時だった。

「何故、何故垣貫迄もがそんな目にっ!」

 これは偶然なんかじゃない。絶対音力に関係した何かに違いない。俺達も早く【前】を修得して、音力内部へ調査に入らなければ!

「垣貫、お前の仇は絶対俺が取ってやるからな!」

 葬列の中に在って俺は、そう心に誓うのだった。



『咆哮』第二部
〜音力〜

《完》


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