夏の終わりに
けれども常に不安が付き纏わないわけではなかった。

その後は私たちどうなるの、
と最初に訊きそびれた真の理由は、
そのあたりにあったのかも知れない。

つまり、
彼が正確な別れの日付を口に出して宣告するかもしれない、
という怖れであった。

二人の夏が終わったことをクミは知った。


「ええ」
と、彼女は同じような静けさで呟き、
頭ではなく彼女の肉体に納得させるように、
その言葉を呑み下した。

「ええ、私もとても楽しかったわ」

男の横顔に安堵の色が滲むのを、
クミは認めた。

「きみが好きだよ」
と、園田は温かく言った。

サヨナラの別の言い方……。
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