夏の終わりに
「ものわかりがいいから?」

初めて言葉にトゲが含まれた。

「今のは聞かなかったことにしよう。
これまでのきみらしくない発言だ」

園田は穏やかにそう言って、
彼女の顎に指をかけて口づけをした。


再び唇を離した時、
彼はもはや彼女の良く知っている男ではなくなっていた。

薄いベールのようなものが表情を覆い、
彼は少し遠くなり、
見知らぬ人のようだった。

そのために、
クミは喉まで出かかった言葉を
呑みこんでしまったのだった。
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