王国ファンタジア【流浪の民】

対峙

 全身を赤いウロコが包み、紫の瞳がギロリと睨み付ける。

「ブレスに気をつけろ! 吐き出す時に必ずワンアクション起こす。それを見逃すな」

 ベリルは走りながら声を張り上げて兵士たちに指示をくだした。

 ドラゴンの尾の近くまで走ると、足を止めてそこにいる兵士たちに再び指示をする。

「尾に注意しろ。デカイ分だけ動きは解りやすいハズだ」

 どうしたものか……このままでは勝てそうにない。

 ベリルはドラゴンを見上げた。

[……我を呼べ]
「!」

 頭の中に響く声。

[必要とするならば、我を呼ぶがいい。強く念じるのだ]

「……」

 この声はヴァラオムだ。ベリルは角笛を手にする。

「共に戦ってくれるというのか」

 角笛を強く握りしめ、目を閉じた。

[我が友の声、確かに聞いた!]
< 160 / 246 >

この作品をシェア

pagetop