王国ファンタジア【流浪の民】
“ビュウウゥゥー!”

 別の空、白いドラゴンは急ぐようにその翼をはばたかせた。

[ハッハァー! すぐに行くぞ!]

 ヴァラオムは威勢の良い声をあげて風を突き抜ける。

「くそっ」
「よせ! 魔法のみではヤツに通用しない」

 攻撃を仕掛けようとするレインをベリルは制止した。

「じゃあ、どうしたらいいんだよ!」

「どのみち、このままではやられるだけだぞベリル」

 サレンスが冷静に言い放った。ベリルはそれに少し目を細める。

「もうしばらく……ヤツの攻撃から逃げてくれ」

「?」

 サレンスは怪訝な表情を浮かべた。

 一体、何を待っているというのだろう。

「!」

 ベリルは、空に別の気を感じドラゴンの背後にまわった。

 その目は常にドラゴンに向けて。
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