王国ファンタジア【流浪の民】
「フェニ!」
「あっベリルさん」

 フェニックスは、自分の攻撃がドラゴンに当てられないのを歯ぎしりしていた。

 ヴァラオムから飛び降りるベリル。

「!?」

 フェニックスは彼の行動に目を丸くした。彼女を抱きしめたからだ。

「今がその時だ」
「え?」

 ベリルはフェニックスから離れると、柔らかな瞳で微笑み、

「今まで翼が無かったのは、お前の潜在能力の高さ故、自己防衛が働いていた」

しかし、目の前の強大な敵にそれは目覚めるだろう。

「ヴァラオムの飛ぶ姿を見ていろ」

 ベリルはそう言い放ち、白いドラゴンに乗り飛び去った。

「翼……」

 そうつぶやいた瞬間、バッ! と背中に突然の感覚。

 そこには、淡いピンクの翼が太陽に輝いていた。
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