薔薇とアリスと2人の王子
エルザの話はこうだよ。
一言で“人間の姿のまま死ぬ”と言っても、海の泡になるように死ななくてはいけない。だからどう死ぬかが問題というわけだ。
「物騒な話だね」
カールの言葉にアリスも内心、同感だった。
「海の中で死なないといけないのよね? 溺死とか?」
「私もそのつもりだ、苦しそうだけど」
この問題は早々解決しそうだ、とアリスが安堵したときだった。
さざ波の音が一層強くなったかと思うと――。
「エルザー! やっと見つけた!」
男性の声だ。声の主を探すと、なんとその人物は海の中にいてね。
短髪が好印象の、ニコニコしている穏やかそうな青年だった。
最初は遊泳でもしてるのかと思ったけど――違ったんだ。
海に浮かぶ彼の下半身に足は無く、立派な魚の尾びれで海面を漂っていたもんだから、3人は驚いた!
そんな3人の横でエルザが砂浜から勢い良く立ち上がる。
「ルートヴィヒ! お前、海から顔を出したらだめだろ!」
「君を探していたんだ。人間になったって聞いたから……」
どうやらエルザの人魚仲間らしかった。