薔薇とアリスと2人の王子
「でも実際、海に戻って彼と会うのが楽しみなんでしょ?」

 これはカールだ。意地悪そうにケラケラと笑っているよ。
 エルザは赤かった顔に少し怒りの色を見せたよ。

「うっ、うるさいっ。た、楽しみなんかじゃ……ない!」

 そう言ったエルザだったけど、素直になれていないだけだというのは明白だったんだ。
 恋人にくらい素直になればいいとは思うけどね。

「あら? そういえば、王子は……?」
「――え?」

 アリス達は砂浜に座っていたんだけど、そういえばイヴァンが見当たらない。
 さっきまでつまらなそうに側をうろついていたと思うんだけどさ。

「僕、探してくるよ。何か嫌な予感がするしね」

 カールが言いながら立ち上がる。

「面倒なお兄さんね」
「慣れたさ、兄さんは王宮にいた時も常に個人プレーだったからね」

 カールが辺りを見回しながら砂浜から岩影に消えてゆくと、エルザが言った。

「あの男たち、王族なのか?」
「そうなの。稀に見るおバカさん達よ。この星の王族じゃないけどね」
「え? あ、そうだったのか……」

 エルザが言葉を濁したんでアリスは妙に思ったんだけど、何も言わなかった。

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