薔薇とアリスと2人の王子
――その頃、兄弟はというと、街の衣装屋にいたんだ。
「衣装屋になんかに来て、どうするんだ」
目映い程に輝くドレスの数々に囲まれたイヴァンが呟いた。
「どうせめかしこむなら、とびきり可愛くしたいじゃないですか」
「ドレスを着せるのか」
「ええ。その方が可愛いでしょ?」
ほら、とカールがドレスをひとつ手に取って、兄に渡した。
真っ赤なレースずくしのそれを、イヴァンは訝しげに睨む。
――その時だよ。
「貴族のお兄さん達、プレゼントでもお探しかい?」
店の奥から出てきたのは老婆でさ。不思議な顔をした2人に、老婆はこの衣装屋の店主だと名乗ったよ。
老婆は二重に重なる腰を引きずるようにして、兄弟の元に歩いてきた。
「内気な女の子にドレスをプレゼントするんですよ」
「ほう、内気な女の子ねぇ……。お兄さん方、その子もしや……ラプンツェルじゃないかい?」
思わず兄弟は声が詰まった。
「ほほっ。驚いたかい? 私が彼女を塔に閉じ込めた魔女だよ」
「それは本当か?」
「嘘を言って何になるんだい」
老婆は手近にあった椅子をたぐり寄せて、腰を降ろす。