薔薇とアリスと2人の王子
 老婆は続けた。

「なんで分かったかって? あんたらからノヂシャの匂いがしたからだよ」

「ノヂシャって……ラプンツェルとも呼ぶ、野菜の事ですか?」

「そうじゃ。塔の壁を這う蔦を見たかい? あれはノヂシャの蔦だよ」


 咳をひとつすると、老婆は兄弟にも椅子を進めた。
 2人は促されるまま、ドレスに隠れるようにして置いてある椅子を引っ張ってきたよ。

「おばあさんはここで店を?」

「この国は豊かでもないからね。高値の衣装屋なんて、誰も来ないよ。隠れ屋には打ってつけじゃ」

 確かにさっきから人の出入りは無かった。
 店内もドレスが並べられているだけで、殺風景だしね。

「あのラプンツェルにドレスとは……何があったんだい?」

 老婆は薄い目を開いて2人を見た。

「フラレた恋人にまたアタックするんですよ。可愛くなってね」

「ああ……宿屋の下働きのクリストか。あの男はやめとけと言ったんだがねぇ……」

 それにイヴァンが説明を求めるんだ。
 老婆の瞳を遠い方を見ているようだった。

「あの男、自分のせいでラプンツェルが暗くなったのに全く無視だからねぇ、わしは好かないんだよ」
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