薔薇とアリスと2人の王子




 その頃、兄弟はようやくドナウアー家の城に辿り着いた。

「随分と綺麗な城だ」

 と、開口一番は弟のカールだ。

「なんでこれが人殺し城なんて呼ばれてるんだ」

「さあ? 外見は綺麗に繕っていても中身はどんなのが潜んでるか分かりませんよ?」

 言いながらカールが扉に手をかけた時だった。

「あらっ、久しぶりのお客様!」

「……え?」

 その高い女性の声は2人の頭上からのものでさ。
 兄弟同時に顔をあげると、扉の真上にある窓から黒髪の女性が顔を出していたんだ。

「待ってて。すぐそちらに向かいますわ」

 女性はそう言うと窓から顔を引っ込める。

 城に侵入する前に発見されてしまった兄弟は苦笑するしかなかったよ。

「どうします兄さん」

「アリスを置いて逃げるわけにもいかない……大人しく招待されるしかないな」

 はぁ、と大きなため息は弟だ。

「兄さんと2人きりの時って災難ばっかりな気がするなぁ」

 2人の前で扉が開く。黒髪をきちんと結いあげた女性がニッコリと微笑んでたけど、兄弟は引きつった口元を戻せなかった。

< 233 / 239 >

この作品をシェア

pagetop