薔薇とアリスと2人の王子
「主人がなかなかお客さまを招かないもので、暇でしたのよ。お2人はどこの国のお貴族ですの?」
兄弟が玄関ホールに入るなりイディが上機嫌に言った。
愛想笑いを浮かべながら答えたのはカールだ。
「えーと僕たち、違う星から来て……。その、魔女探しを」
「魔女?」
「ローライドって魔女。知りませんか?」
さあ、とイディが首を振るんで、兄弟は肩を落とした。まあ期待はしていなかったけどね。
イディは二人を一階のある部屋に通した。
「客間ですの。」
言われた通り、見事な部屋でね! 一級の家具に一級の装飾品。
王宮に暮らしていた兄弟もさすがに唸った。
「とても綺麗なお客さま。主人にお目通ししたいわ。待っていて。すぐに主人を呼んで来ますわ」
彼女は言うが早くさっさと部屋を出て行っちゃった。
「主人を呼んで来るって……僕ら殺されません? コレ」
はは、と冗談にならないカールの笑み。イヴァンは黙ったまんまだった。
「ほら兄さん、黙ってないで行きますよ」
そう言った弟に、イヴァンはいぶかしげな瞳を向けた。どこに行くんだ、とでも言いたげにね。
そしたら弟は満面の笑みでこう言うんだ。
「決まってるじゃないですか! アリスを助けに行くんですよ」
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その頃のアリスといえば、城主を追って地下への秘密の階段を降りているところだった。