薔薇とアリスと2人の王子
アリスは氏と一緒にいた妻の姿を思い出した。イディのことだ。
「馬車から一緒に降りてきたあの奥さんも殺すつもりなのね!」
氏は首を横に振ったよ。それを怪しんでいるアリスに、氏はたっぷりとした自慢の髭を撫でながらこう言ったんだ。
「イディの事かね。あいつは殺せないかもしれぬ……今、我が妻イディはお客の相手をしてるのでな」
「――お客?」
氏の笑い声が地下室に響いた。
「若くて綺麗な二人の王子様の相手だ。君を助けに来たのだろう?」
「えっ……馬鹿王子たちが!?」
王子たちが助けに来てるなんて思ってもいなかったアリスは動揺を隠せない。
その様子を楽しそうに氏は眺めててさ。
「私は上へ行くよ。王子様に挨拶をせねばならぬからな。せいぜい助けを待っているがよい」
アリスは直感で思った。氏は先に王子たちを殺そうとしてるってね。
でも自由を奪われているアリスには何も出来ない。氏が地下室から去っていくのを大人しく見ていることしかね。
(あ、あれは……!)
アリスの視線にとまったのは、部屋の隅にある氏の鞄だった。吊るされている女たちの死体をなるべく見ないようにして、鞄をよく見てみると――見覚えのある小箱が目に入ったんだ。
(ロサ・アンジェラ!)
そう、まさしくロサ・アンジェラが入っている小箱だった。
(あれを持って逃げることが出来れば……)
しばらく思考を巡らしてみたけど、縛られているこの状態じゃあ逃げるのは無理だ。
ただアリスは、王子たちの身を案じることしか出来なかったよ。
「馬車から一緒に降りてきたあの奥さんも殺すつもりなのね!」
氏は首を横に振ったよ。それを怪しんでいるアリスに、氏はたっぷりとした自慢の髭を撫でながらこう言ったんだ。
「イディの事かね。あいつは殺せないかもしれぬ……今、我が妻イディはお客の相手をしてるのでな」
「――お客?」
氏の笑い声が地下室に響いた。
「若くて綺麗な二人の王子様の相手だ。君を助けに来たのだろう?」
「えっ……馬鹿王子たちが!?」
王子たちが助けに来てるなんて思ってもいなかったアリスは動揺を隠せない。
その様子を楽しそうに氏は眺めててさ。
「私は上へ行くよ。王子様に挨拶をせねばならぬからな。せいぜい助けを待っているがよい」
アリスは直感で思った。氏は先に王子たちを殺そうとしてるってね。
でも自由を奪われているアリスには何も出来ない。氏が地下室から去っていくのを大人しく見ていることしかね。
(あ、あれは……!)
アリスの視線にとまったのは、部屋の隅にある氏の鞄だった。吊るされている女たちの死体をなるべく見ないようにして、鞄をよく見てみると――見覚えのある小箱が目に入ったんだ。
(ロサ・アンジェラ!)
そう、まさしくロサ・アンジェラが入っている小箱だった。
(あれを持って逃げることが出来れば……)
しばらく思考を巡らしてみたけど、縛られているこの状態じゃあ逃げるのは無理だ。
ただアリスは、王子たちの身を案じることしか出来なかったよ。