薔薇とアリスと2人の王子
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さて、残されたのは兄弟2人だ。
しぃんとした空間が訪れて、しばらくだんまりを決め込んだままの2人。
やっとカールが口を開いてね。
「僕らが2人っきりになるのは3時間ぶりです。――どういう意味か分かります?」
「お前がそんな趣味だったとはな。男色までに留まらず近親相姦か」
カールはすぐに答えずに、長い黒髪を束ねてあった赤いリボンに手を伸ばすとそれを結び直していてね。
暇を持て余してテーブルの上の調度品を弄くっていたイヴァンを一瞥して、ふたたび皮肉的な口調で話しだした。
「嫌だなぁ。僕はホモじゃありません。つまりアリスと、3時間一緒だったって言ってるんです」
「そうだな」
イヴァンは少なからず不機嫌だったよ。
なぜならあの“厚化粧”の香水の臭いが、いまだに離れてくれなかったから。
「そんな怖い顔しないでほしいなぁ」
「何を言う。俺はいつだって眉目秀麗、容姿淡麗だ」
「そうですか!それ二つとも同じ意味ですから。 僕が言いたいのは、これからアリスと旅が出来るのかってことです」
カールは人差し指をたてて、いかにも正論を唱えるようにイヴァンに言ったよ。