薔薇とアリスと2人の王子
< 3 >
森を出たあと、アリスは自分の家に2人を招き入れたんだ。
酷く狭く寂れた家に男と少年は驚いた顔を見せた。
それがアリスには不思議でね。この町は裕福とはいえないから、アリスの家と同じ貧相な家はそこらじゅうにあるもの。
だからアリスはすぐに分かった。兄弟はこの町の住民じゃないってね。
「あの森で何をしていたの? あの森はバジリスクっていう蛇の化物が棲んでいるのよ」
アリスは2人を椅子に座らせて、自分も座った。座った途端に椅子が軋んで今にも潰れそうだった。
扉からはすきま風がひゅうひゅうと耐えまなく吹いている。
弟が呑気そうに言った。
「僕らこの国初めてで迷っちゃって」
「……そんなに宝石ぶら下げて、この辺りは治安が悪いからすぐ盗られるわよ」
弟はああ、と生返事をして兄の方を見た。兄は煩わしそうに赤毛をいじくっていてさ、アリスの話を聞いていたんだかどうだか。
兄が頷いたのを確認した弟がニンマリと笑った。
「僕ら、ある星の王族でさ。兄さんは王子なんだ」