クロスロード

擦れた感触と袖口から伝わる体温がリアルに伝わる。


……どきどきとはちょっと違う。

ゾクゾクした感情が、頭から爪先まで支配した。

とん、と肩に触れた手。

重力に従ってスローモーションで落ちていく私の身体。


――ぼすっ


柔らかすぎて頭が沈み過ぎてしまう羽毛の枕。

ああ、そっか……ここ、スイートルームだもんね。

私の部屋とは大違いだな、と妙に冷静な脳内。



「ねえ、翠君」

「なに、」



目の先にいる翠君に向かって小さく笑う。

そっと腕を伸ばし彼の頬に触れてゆっくりと撫でる。



「いっぱい、愛して」



きっと翠君はドラマみたいなかっこいい台詞を言ってはくれない。

感情が表情に出ることも滅多にない。

翠君から私に触れてくれることだって、片手で数え切れる程しかない。
< 173 / 251 >

この作品をシェア

pagetop