クロスロード
……それで、いいの。
不安になることだって沢山ある。寂しい夜だってあった。
長い間離れていた距離は簡単には埋まらないってこと、十分分かったけど。
「ここなら誰にも邪魔されないよ」
主従関係を恐れることも、誰かの視線を気にすることも
オートロックで鍵がかかったこの部屋には誰も入れない。
「だから私も、」
かっこいい台詞がなくても無表情でも、触れてくれることが極端に少なくても。
私を好きでいてくれたらいいの。
愛してくれたら、それでいいの。
「――私も翠君のこと、愛していいかな?」
その言葉を最後にベッドサイドにあった照明ダイヤルを回す。
徐々に暗くなっていく豪華な部屋。
オレンジ色の明かりを微かに残せば、薄っすらと翠君の顔が視界に映った。
ネクタイを失った首元に腕を回して彼の顔を近づける。
コツン、と触れ合う額。
翠君が何かを言う前に軽いキスで唇を封じた。