クロスロード
「でも、平気だよ」
頬を撫でる手にそっと自分の手を添える。
相変わらず冷たい。そして私の手は熱い。
二つの温度が重なった瞬間、同時に視線も交わった。
「ちゃんと答える。……隠さない」
私達の関係を『秘密』という鎖で囲ったのは他の誰でもない私。
噂になるのが嫌だから。騒がれたくないから。
全校生徒に顔が知られている副会長と一般生徒が婚約関係。
しかも学校ではほぼ他人状態の私達。
そんなの確実に噂の中心になってしまう――
穏やかに過ごしたかった私は婚約関係を秘密にすることにした。
翠君にも秘密にして、と頼んだ。
だけど……
「翠君が、誰かに狙われちゃうのは、……やだ」
『あーやばっ!一度でいいから抱かれたい!』
分かってる。香織さんには彼氏がいるし、冗談で言ったことくらい。
でもね、本気でそう思っている子だってきっといるんだ。