クロスロード
「は?何それ」
「だから、」
「別に俺は断るし、それに」
すっと首筋に当てられる指先。
そこはさっきまで唇が触れていた部分で、かあっと頬に熱が集まった。
「柚じゃなきゃ、無理だし」
弾けた言葉は一言も漏れずに鼓膜を振動させる。
ちゃんと聞こえてた。聞こえてたんだよ。
でも実感がわかなくて、追いつけなかった身体がピシリと固まった。
「……じゃ、じゃあっ」
翠君との距離がゼロになりそうだった直前、私は口を割って言葉を発す。
所謂スン止め。案の定、眉間にしわを寄せた翠君が視界に映った。
「婚約者とは言わない、けど」
「けど、何」
「かっ、かれ、……彼氏って、言ってもいい?」
付き合う付き合わないを通り越して婚約者になったから『彼氏』じゃない。
でも『彼氏』ならそこまで大騒ぎにならないだろうし、高校生らしいんじゃないのかなって。
咄嗟の思いつきで言ってしまったけど、これなら大丈夫だよね。うん。