クロスロード

「は?何それ」

「だから、」

「別に俺は断るし、それに」



すっと首筋に当てられる指先。

そこはさっきまで唇が触れていた部分で、かあっと頬に熱が集まった。



「柚じゃなきゃ、無理だし」



弾けた言葉は一言も漏れずに鼓膜を振動させる。

ちゃんと聞こえてた。聞こえてたんだよ。

でも実感がわかなくて、追いつけなかった身体がピシリと固まった。



「……じゃ、じゃあっ」



翠君との距離がゼロになりそうだった直前、私は口を割って言葉を発す。

所謂スン止め。案の定、眉間にしわを寄せた翠君が視界に映った。



「婚約者とは言わない、けど」

「けど、何」

「かっ、かれ、……彼氏って、言ってもいい?」



付き合う付き合わないを通り越して婚約者になったから『彼氏』じゃない。

でも『彼氏』ならそこまで大騒ぎにならないだろうし、高校生らしいんじゃないのかなって。


咄嗟の思いつきで言ってしまったけど、これなら大丈夫だよね。うん。
< 180 / 251 >

この作品をシェア

pagetop