クロスロード
「……何で殴るわけ?」
「ご、ごめん……自分の部屋だと思い込んでて…」
横に長い枕を共有している翠君はあからさまに不機嫌です、と言いたそうな表情。
薄暗いから分かりにくいかな、と思っていたけど至近距離にいるせいかはっきり把握できてしまった。
30センチも離れていない距離にいる翠君。
……い、今更緊張してきた……
「あの……今何時くらいか分かる…?」
「知らない」
「そ、そうだよね……」
唯一分かるのはまだ夜だということ。
窓の外は真っ暗だし、空には三日月がのぼっている。
結構寝てたのかと思ったけど、そうでもなかったみたいだな。
「……翠君、もしかして私が殴っちゃったから起きちゃった?」
十分有り得そうな怪しい疑問をぶつけてみる。
大人しく黙ってればいいのに、妙に緊張しちゃって口からは質問しか出てこなかった。
「そうじゃない」
「……寝てないの?」
だらんと垂れていた手を引っ張りだして布団を掴み、口元を隠すように引き上げる。
当然、隣にいる翠君にも布団が顔付近までかかってしまった。
「邪魔」
「……だって、布団ないと無理だよ……」
「は?」