クロスロード

お願いだから察してください。


そう願っても翠君に通じるわけなく、不快そうに眉を寄せた。

どう考えても布団がなくちゃ無理。恥ずかしくて死んじゃう。


……制服のシャツは着てないし、とにかく布団がないと無理な状況で。

幸いなことにまだ辺りは暗い。今が夜で本当によかった。



「ねえ、翠く」



何か話さなきゃ、と思い口を開いたのも

私の視線が翠君の額にいっていたのも偶然だった。

身体が横向きのせいで前髪がはらりと垂れている。

そのお陰で覗いた、消えない過去の過ち。


――刻まれた傷跡。



「……、」



今でも鮮明に思い出せる。

幼い私が階段から落ちて、それを庇った翠君が怪我をしたこと。

クリスマスイブに翠君が私のお父さんに傷を見せていたけど、私の位置からは彼の傷を見ることはできなくて。

実際、この傷を見るのは今が初めてなのかもしれない。



「なに?」



私が紡いだ言葉の続きを催促される。

けど、喉が渇いて声にならない。

僅かな月明かりで照らし出されるソレは、ぎゅっと心臓を潰されそうになった。


す、と翠君へ手を伸ばす。

震える指先が傷跡へ触れた時、彼の表情が一瞬揺らいだ。
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