クロスロード

「……ごめん、なさい」



思い返せば――、謝罪をしたことが、なかった。


あの事件以来翠君を避けて避けて、避け続けて。

関わってはいけないと何度も忠告されて。

私を守ってくれたにも関わらず、何も言えないまま時だけが過ぎていた。



「傷を負わせちゃって、ごめんなさい……っ」



誰が本家?誰が仕える家系?


……こんなの、立場逆転だよ。

翠君の傍にいたのなら、私が彼をまもらなければいけなかった。

なのに私が守ってもらっている、なんて。



「っこの傷だけじゃない……神社の時だって、私……」



ぽた、と枕に雫が落ちる。

顔が横を向いているせいか、頬や鼻を冷たい涙が伝っていく。

泣いたって何も変わらないのに。

起きてしまった出来事は、決してなくすことはできないのに。



「ごめ、んなさ――……っ、」



ぐいっ

急に後頭部へ回された腕。

抱き寄せられたのは彼の首筋で、脈拍がしっかり聞こえてきた。



「なんで謝るわけ?」
< 186 / 251 >

この作品をシェア

pagetop