クロスロード
「え……」
細い指先が私の髪をすく。
直に触れる肌が心地よくて、流れていた涙が静かに止まる。
「俺が勝手に行動したんだし、謝られても困る」
「っ、」
――昔からそうだ。
私が気にしないように、傷つかないように言葉を選んでくれる。
いつだって助けられてきた。小さい頃からずっとずっと。
本来なら私がまもるべき立場。
にも関わらず、常に私は彼にまもられてきた。
「……あり、がとう」
そう呟いた瞬間、普段は無表情な彼の表情が一瞬崩れた。
それくらい今の言葉には深い意味があった。
たったの5文字。日常生活で使う言葉。
でも私が翠君にお礼をいうことなど、数えるくらいしかない。
いつもいつも、口に出てしまうのは『ごめんなさい』。
翠君が悪いことをしたわけじゃないのに気持ちが先走って謝ってしまう私。