クロスロード
「どうしたんだよ?」
―――こないだの翠君と、日高君が記憶の影を重ねた。
でもちょっと違う。
あの時はこう、ぎゅっと胸が締め付けられるような感覚だった。
いや、今もドキドキしてたら問題だけど。
だめだ……こんなんじゃ今日、翠君といる時発狂しちゃいそうだよ。
「……あ、」
フイに日高君が声を上げて。
その視線は教室のドア。
なんだろう、と私も顔を上げて視線をそっちへ向けると。
「あーちゃん、柚……何してんの」
「いかがわしいことカナ」
「白昼堂々やめてくれない?」
恐ろしいほど整った顔でウインクする日高君に碧君はうんざりした表情を見せる。
勢いよく机から立ち上がり「違うからっ!」と大声で否定する私。
日高君……彼女さんに目撃されたら半殺しされちゃうんじゃないのかな……
「あーちゃん、今すぐみっちゃん呼んでこよっか」
「ちょ、それだけは勘弁」
降参、とでもいうように両手を顔の横まで上げる。
……顔は笑っていたけど。