アリスとウサギ
「いらっしゃいませ」
聞こえたのは低くてセクシーな女の声だった。
声の主はカウンターの奥でカクテルを作っている様子。
黒髪はスパイラルパーマが施してあり、左頬に一束垂らしてある以外は一つにまとめられている。
バーテンダーのような装いだが、これが彼の友人だろうか。
すごく、色っぽい女の人だ。
「あいつから聞いてると思うんだけど……」
彼女はええ、と言って出来上がったカクテルをカウンター席の客へ差し出した。
「そこのテーブルにどうぞ」
手のひらを上にしてスッと示されたテーブルに着席する。
会話を聞く限り、彼女が直人の友人ではないらしい。
カウンター6席とテーブル席1つの、コジャレたバー。
ジャズが流れており、サクスフォンの重い音が大人っぽく感じた。