アリスとウサギ
「直人くん、今日は珍しく大人数ね」
彼女はそう言いながらこちらにやってきて、改めて「いらっしゃいませ」とおしぼりを一人一人に広げて手渡した。
彼女はこの店の店長、アヤ。
直人の友人がたまに様子を見に来る以外は、一人で営業している。
バーのマスターといえば男性だという先入観を持っていたアリスは、不思議なオーラを放つ彼女に無意識に目を向けた。
そして彼女の持つ独特の色気と気品にウサギを思い起こされ、熱いため息をつく。
ウサギのことを忘れるために来たのに、それではいけない。
「改めて、カンパーイ」
アリスは頭に浮かんだウサギを追い払うように、グラスの中のファジーネーブルをグビグビと腹に入れた。
若干冷静さが欠けていたとはいえ、さすがに後悔。
胃の奥の方から沸き上がるように酔いが回っていく……。