アリスとウサギ

 みんなはまったり思い思いに語る。

 会話に相槌を打つことさえままならなくなったアリスは、逃れるように「お手洗い行ってくる」と席を立った。

 用を足して、手を洗って。

 洗面台の鏡に映ったアリス自身の顔は、目が半分ほどしか開いていなかった。

 フラフラしているため、ヒールの靴で歩くのが辛い。

 慎重にトイレの段差を降りると、店内には微かにサムライの香りがした。

 カウンター席の誰かが付けているのだろうか。

 他にも香水を付けている人間はいるだろうに、またウサギに意識が行く。

 よほど酒が効いているのか、目の前にウサギの幻覚まで見えてしまう始末。

「重症だ……」

 アリスはため息混じりに呟き、自らの頭をペシペシとはたいた。

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