アリスとウサギ

 彼によって足下はバランスを取り戻すことができた。

 役立たずの足から目線を上げる。

 見覚えのあるストライプのスーツ。

 その上に、顎髭を生やした輪郭。

 そしてパッチリした大きな目はアリスをしっかりと見ている。

「ウサギ……?」

「ん?」

「ウサギ……」

「どうしたんだよ。席、戻るぞ」

 ウサギに肩を支えられながら歩みを進めると、テーブルにいるみんなの視線がこちらに向いた。

「ほら、ゆっくり座れよ」

 彼によって椅子が引かれ、肩を支えられたまま腰を下ろす。

 落ち着いて座ったように見えても、アリスの頭はパニック状態だ。

「何でウサギがここにいるのよ?」

 わけがわからず涙目でこう言うと、しゃがんで視線を合わせたウサギがクスッと笑った。

「俺の店だからね」


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