アリスとウサギ

 アリスはこの時、アヤが「啓介と似てる」と言ったのを思い出した。

 少しだけ気持ちが前向きに動く。

 ウサギへの気持ちと向き合ってみようかと。

「ウサギのこと忘れられないんでしょ?」

「……うん」

「だったら見舞いのプリンでも持って病院に行きなさいな。弱ってる今こそ本音を聞き出すチャンスなんだから」

 早苗に背中を押され、アリスはこの日の講義を一つも受けないままキャンパスを飛び出す。

 彼女に言われたとおり、見舞いのプリンを購入して病院へ向かった。

 思えば確かに彼を避けてばかりだった。

 女をアリスのバイト先に連れ込んだり、はたまた合コンで自分の女だと言い張ってみたり。

 もしかしたら、ひょっとしたら、万が一くらいの確率で、彼なりの駆け引きなのかもしれない。

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