アリスとウサギ

 自分の名前が出てしまったことにより、アリスは部屋に入るタイミングを失ってしまった。

 しかし会話の内容が気になるため、そのまま耳だけを澄ます。

「ずっと隠し続けるつもり?」

「隠すも何も、もうあいつは関係ねーよ」

「いい年していじけないの。奈々子ちゃんの気持ちはわかってるんでしょ?」

「まーな。でも、あいつはもうダメ。相手にならない」

「こないだ先に帰られたこと、根に持ってんの? 啓介らしくない」

「そうじゃない。そこじゃないんだよ……」

「じゃあ何よ?」

「もういいだろ、あいつのことは。それよりアヤ、お前だっつーの」

「え? 私?」

「そう。いつ俺と結婚してくれんの?」

「もう、何言ってんのよあんたは」

「本気だって。アヤは俺の稼ぎで専業主婦にでもなればいいじゃん」

 アリスが聞いたのはここまでだった。

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