アリスとウサギ

「アヤさんの店ってことでしょ? 無理! 絶対無理、泣いちゃうよ」

「泣いてやればいいのよ」

 随分男前に言ってのけたが、傷心しきっている今、何を思って恋敵に会いに行こうというのか。

 アリスには早苗の考えが全く理解できない。

「そうと決まったら、行くよ」

「え、決まったの? あたしそんなにお金持ってないし」

「ウサギにツケてやればいいのよ」

 フンッと鼻息を漏らしながら踏ん反り返った早苗は、さっさとジャケットを羽織って席を立ってしまった。

 アリスは困惑しながらも彼女を追う。

 いつもそうだが、早苗は行動力があって、少し強引。

 夏の旅行だってそうだった。

 だけど彼女についていって、間違いだったことはない。

 アリスは奥歯を噛み締め、早苗について脇道からネオン街に入っていった。

 立ち入ることもないと思った矢先だったのに。

 通りに出ると、ウサギの店はすぐそこだ。

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