アリスとウサギ
店内に入ると、落ち着いたジャズがアリスを包み込んだ。
他に客はいない。
気まずいような、でもそれはおかしいと思える複雑な心境で、とりあえず早苗とカウンターの席へと座る。
アヤは二人におしぼりを広げて手渡し、「ようこそ」と言った。
体の大きさは変わらないが、大人の雰囲気を醸し出すアヤは大きく見える。
それは早苗も変わらないのか、さっきまでの覇気がみるみる消えていった。
「奈々子ちゃんと……、そう、早苗ちゃんだよね」
「あ、はい」
名前を覚えていたことに驚いた早苗は、噛みつきそうな勢いで階段を上ったのに、すっかり大人しくなった。
とりあえず飲み慣れたカクテルを注文し、三人で乾杯。
一口飲んでグラスを置くと、先にアヤの方が口を開いた。
「啓介と何かあった?」