アリスとウサギ
「でも、まだ忘れられないんでしょ?」
早苗の言葉に涙は溢れ、手元のおしぼりで目を押さえる。
悔しいが、忘れられないのは事実。
プロポーズされたアヤ本人はその気はないとハッキリ言うから、最後にしたはずの悪い癖がくすぶる。
それをググッと押さえ込んで、グラスを空けた。
アヤはグラスを受け取り、新しく何かを作り出す。
「啓介、明日もう一日入院するわよ」
「え? 検査結果、まだ出てないんですか?」
「出たの。出た上で、もう一日」
スッと新しいグラスが差し出された。
中身はオレンジジュース。
甘酸っぱい中でほんのり苦い、ウサギへの気持ちの味がする。
「お見舞い行ってあげてね」
アリスは返事もせずにオレンジジュースを味わった。