アリスとウサギ

「そういうことなら……代わりはいくらでもいるじゃない」

 箱の取っ手を握りしめ、アリスも目を伏せた。

「そうだよな」

 再び胸がきしみ、俯いたまま耐える。

 これだから、素直になれない。

「じゃあ、中途半端に優しくしないでよ……」

 頑張って低く絞り出したのに、震えてしまった。

 感情が溢れそうなことはバレているだろう。

「お前こそ、中途半端に俺の前に現れんなよ」

 ハスキーでかつスパイシーな声。

 のど仏が小さく揺れた。

 アリスは再び俯き、立ち上がる。

 ついさっきまで繋いでいた手にバッグを握り締めて。

「わかった。あんたの居場所も知ってるし、近寄らない」

「ああ、そうしてくれ」

 ドアを開けると、病室とは違うにおいがした。

 出る前に、背を向けたまま一言。

「あたし、人を好きになってこんなに後悔したことなかったよ」

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