幸せのカケラ
「ふふ…何か、あなたの匂いがする」

「え?変な匂い?」

「違うわよ。何て言うか…う〜ん…透き通った匂いなの。雨上がりの空気みたいな」

「それって、無臭って言わない?」

「言わない、あなたの匂いよ」



僕の匂い。




僕は、君の匂いも知ってる。

香水とか、髪の匂いとかじゃなくて、君だけの匂い。



君はいつも、日だまりの匂いがするんだ。


ふわりと暖かくて、やんわりと柔らかくて、自然が与えてくれる温もりみたいな、そんな匂い。


雰囲気とも言えるかもしれない。


君は気付いていないかもしれないけど、たまに夜、眠れない時なんか、眠る君の手を握りしめる時があるんだ。

そうすると、不思議と眠れる。


とても安心する匂いなんだ。





「今、何時?」

「8時を回った所だよ」

「思ったより、早い時間ね」

「じゃあ、少し歩こうか?駅前の公園で、もうクリスマスのイルミネーションをやっているみたいだよ」

「本当?見たい!」




同僚が教えてくれた情報。

ロマンチックだろ?嫁と見てこいよ、なんてからかわれたけれど。



まぁ、君が喜んでいるからいいや。


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