窓に灯
暗中模索




 この日、恵里は8時頃買い物袋を持って帰宅した。

「ご飯すぐ作るね」

 いつもの笑顔で袋から食材を取り出す恵里。

 俺は話を切り出すタイミングを図る。

 今日こそ聞き出すんだ。

 帰りが遅い理由も。

 あの男の正体も。

 いいか、俺。

 冷静さだけは失うな。

 どんな答えが返ってきても、冷静に、落ち着いて対処しろ。

 絶対に終始俺のペースを乱すな。

 優位を保て。

 そして、どんなに辛くなってもイイ男を演じろ。

 しつこく言い聞かせると緊張が高まってしまった。

 思い切りはいいが小心者なのである。

 キッチンにいる恵里の後ろ姿を眺めていると、ホワーッといい匂いがしてきた。

 ぐるるるる……

 間抜けに腹が鳴り、それを聞いた恵里が振り向く。

「すぐできるからね」

「ああ」

「先に手ぇ洗っといて」

「……うん」

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