恋せよ乙女

それにしても、さすが土曜日だ。
平日より、確実に多い人々で賑わう駅周辺。広がる喧騒。

でも、どうやら氷室さんはその喧騒が苦手ならしく、そっと見上げた彼の顔は微かに歪んでいて。


「……まず、どこで何を?」


とりあえずそう問い掛けてみたあたしに視線を向けると、前方の店を指差し、おもむろに口を開いた。


「…ん、まずはあそこ。文具屋。」

「文具屋?」

「そう。 …ほら、閉祭式のときに、金色のくす玉を割るだろ。それに使う金色の紙と、体育館に貼る横断幕用のロール紙が必要なんだ。」

「……へぇ。」


氷室さんの言葉を聞きながら思い返してみた、去年や一昨年の学祭。
うん、確かにそういえば、閉祭式でくす玉を割っていたな。降って来る色とりどりの紙吹雪に、1年のときは結構感動したんだっけ。
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