恋せよ乙女
――だけど。
開けっ放しのドアを目の前にした刹那、バタンっと大きな音をたててドアが閉まった。
風か、だなんて呑気なことを考えるほどあたしは悠長ではない。さっきここまで来るときは、そんな強風なんて吹く様子は無かったのだ。
大きな音と急に暗くなった視界に驚いたのも束の間、急に沸き上がってきた不安……。焦ってドアを開けようとしたあたしの耳に、カチャリと無情な音が響く。
「え、ちょ……、何!?」
どんなに強く引いても押しても、開かないドア。その事実に、さっきの音は錠前がかけられる音だったのだと、容易に想像できた。
いきなりで予想外すぎる出来事に、あたしの中にはただ不安と焦りが募っていく。
それを紛らわすために何度も何度もドアを叩けば、ドアの向こう側から微かに、笑い声が聞こえてきた。