恋せよ乙女
だからもう恐らく、あたしの帰りが遅いと感じた世奈が探し回ってくれるまで、ここから出られる術は無いのだろう。
ドアはさっき見た通り頑丈で、あたしの力だけじゃ壊すことは適わないだろうし、鈴木さんが言っていた“助け”も、本当に寄越してくれるか疑わしい。
「氷室、さん……」
ドアに背をあずけたまま、縮こまるように体育座りをする。そして心細さに身を委ねれば、思わず呼んでしまった大切な人の名前。
疑念は晴れないままだし、やっぱり鈴木さんの言葉が気になってしょうがないけれど。氷室さんがあたしにとって大切なことには、何の変わりも無い。
今、一番顔を見たいのは氷室さん。
助けに来てほしいと願うのも氷室さん。
―――ねぇ、本当に。
早くここから出して。助けて。
早く会って、全てを確かめたい。
全部鈴木さんの戯言だと、またそう言って安心させてほしい。
音という音も無い、この肌寒く暗い空間で、あたしが滅入ってしまう前に。