恋せよ乙女
目に映る人だらけの風景も、耳に届く街の喧噪も。つい2週間前の光景と重なって、胸が苦しくなる。
いくら生徒会の所用だったとはいえ、あの日の氷室さんとのデートはあたしにとって、間違いなく幸せな一時だった。
隣に居て、一緒に笑って。
だから今、改めてその時を思い出せば思い出すほど、あたしの心は軋んでいく。
「…ちょ、紫音。あんた、ちっとも楽しそうじゃないね。気晴らしに、と思ってたんだけど、あたしの配慮が足りなかったわ。ごめん。」
思い出に思いを馳せているうち、今のあたしの隣には世奈がいたことをすっかり忘れてしまっていた。
思わずため息を漏らしてしまったあたしを見て、世奈が申し訳なさそうに首を傾げるけれど。
「そんなことない。世奈が誘ってくれて、嬉しかったよ。」
何も世奈が、謝る必要なんてない。
今はきっと、独りでいる方が余程つらいと思うから。