恋せよ乙女
「そ。それならいいんだけど。」
「うん。………………あ。」
あたしの言葉に納得したかのように、世奈が前方へと視線を戻すのを見届ける。そして短く相槌を打った刹那、見覚えのある風景にチクリと胸が痛んだ。
それと同時に、歩んでいた足が止まる。
「……って、いきなりどうしたの?」
不審げにあたしへと問い掛けてくる世奈に何も答えないまま、あたしは前方を指差す。
世奈がその指を追った先には、所せましと並べられた店々があり、その隙間に、これまた見覚えのあるお洒落な外装の小さな建物……
「“Cafe de Classic”……?」
その建物に掲げられた看板の文字を、世奈がゆっくりと読み上げる。まるで、あの日のあたしのように。
そう。あたしが指差すその先には、氷室さんと来た、あの喫茶店があった。