恋せよ乙女

ゆっくりと視線を向けた先、世奈は先程同様、優しい表情をしていて。あたしと視線が絡んだ刹那、微かに口角を上げた。

――そして、


「紫音、大丈夫……大丈夫だよ。あんたはちゃんと、会長に想われてる。何も心配することなんて無いじゃない。あの会長が、こんなガラでも無いことをしてくれるのは、あんたのためにだけだよ、きっと。」


肩を叩かれながら紡がれた言葉に、何か熱いものが込み上げて来た。世奈の言葉が、脳内でリフレインする。

“あんたのためにだけだよ”

……でも、本当にそう?
あたしのために、してくれるのなら。
してくれるほど、想ってくれているのなら。

どうして前夜祭の日、あたしのことを探してくれなかったの。本当に、あたしが軟禁されていたことさえ、知らなかったの?

人通りが多い歩道の真ん中、ただでさえ邪魔で目立っているのに、泣きそうなあたしと真顔に戻った世奈が見つめ合っている様子は、明らかに異様なものだった。
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