恋せよ乙女
時折浴びる好奇の視線や、煩わしい喧騒を完全にシャットアウトし、ゴクリと唾を飲み込む。
胸元の手を強く握りしめた後、涙を流さないように必死で堪えながら、一番気になっていることを口にした。
「……ねえ、世奈。どうして前夜祭の日、あたしが戻って来ないと隼人には伝えたのに、氷室さんには伝えてくれなかったの?」
あたしが氷室さんを大好きだって、世奈は誰よりもわかってるはずなのに。何で隼人にだけ?
あたしの問いに、世奈の眉間に数本シワが寄せられる。
「え…?ちょ、待って紫音。何か誤解してる、と思う。」
そして、困惑したように垂れ下がる眉と発された言葉に、あたしの方こそ訳がわからなくなった。