恋せよ乙女

「ほんと、毎日。迷惑だって言ってるのに、いつもここに来て。しかもノックした瞬間、許可してないのに思いっきりドアを開けて。
毎回毎回、全っ然僕の話を聞かないんだ。
…全く、笑っちゃうよね。」


…――それは、あたしですか?
…――それとも違う誰かですか?

そう問い掛けられるほど、あたしは自分に自信なんて無かった。もし仮に聞いてみたとして、会長の口から違う誰かの名前が出てきたら?

例え今のあたしが何も覚えてないとしても、あたしの心が傷つくだろうことは容易に想像できる。結局あたしは、全てを思い出せないくせに傷つくことを恐れてるのだ。

一番大切で大事なことも、確かめることができない。
思い出したい記憶のために、自ら足を踏み出すことさえできない。

そんな自分が、心底嫌になる。
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